2018-9-5 つれづれ
秋だ。9月だ。フリーランスとは聞こえのいいひとりよがりな日々を送り始めて3ヶ月が経過した。当初はどっぷり家にこもっていると思ったが、平日土日問わずソトに出ては活動をしていることは喜ばしい。もちろん休みの日は眠っているだけの1日もあるし、つんどくが減る気配はないし、相変わらずの部分もある。
小学生のわたしが夢に描いていた「本にかかわる仕事」は、書き物や、”まちライブラリー”、”NovelJam”で実現できて、それもそれで、よかったねとひと声かけてやりたいのだけど、もう少し未来のわたしから、それじゃあまだまだよ、とエールが飛んできている気がする。
話はちょっと飛んじゃうけど、WOWOWで放映されているリアリティーショー「プロジェクト・ランウェイ」という番組がある。参加者の創作意欲と熱意にいつも心奪われて見入っていて、最新作のシーズン16では、一世一代の舞台となるニューヨーク・ファッションウィークにジャパニーズのケンタロウはじめ、精鋭メンバー5名が全員挑戦することになった。
短時間でハイファッションを仕上げなければいけない参加者は「考える時間がない」からこその「考えず」にいく大胆な思い切りの良さと、ランウェイで映える洗練されたデザイン、デザイナーとしての己を超えていくというチャレンジ精神が同時進行的に試され、ふるいにかけられているのだ。
ともかくも毎週の番組を楽しみにしながら、私にいつも足りないものに気づかされる。
番組に登場した精鋭5人には作品を通してのビジョンとパッションがあった。
答えはすぐそこにありそうな気がする。
リズムを作りたい。
そんな日がつれづれに過ぎ行く。
今夏、最もよく聞いた椎名林檎。
2018-08-18 「”本”と”デザイナー”町口覚+松本弦人、杉浦昭太郎+山家由希」 NovelJam2018秋 プレイベント
日本独立作家同盟主催、トークイベント司会をつとめてきた。準備は万端と言いながら緊張でおろおろする序盤とふがいなさは、いずれ挽回していきたいぜと、参加者からの面白かった、という声を聴きながら思うところである。
さて、ライブパブリッシング「NovelJam」というイベントがある。これは「著者」「編集者」「デザイナー」がリアルに集まり、その場でチームを作り執筆校正、表紙をつけ短時間で「本」を完成させ電子書籍で販売をめざす、かなりトリッキーなプロジェクトだ。
実は第1回目は著者で参加し、第2回目は編集者として参加していた。第3回目となる今回は運営ディレクターの役回りとなる。
学生時代から本が好きで出版のいろはを学びつつ、思い返せば2010年には”電子書籍元年”、恩師の指導の下に冊子をまとめたこともあった。探せば確認できるかどうか、はたして授業での雑談だったか、「本づくり」はこの3本柱+読者で完成するのでは、という提示をしていたようにも記憶している。
それから8年の間に、ひとり出版社なるビジネス形態や、セルフパブリッシング(インディペンデントパブリッシング)、YouTuberやインフルエンサーの台頭、地元書店の閉店、国際ブックフェアも立ち消え、業界の長い低迷なんかもあり、「著者」×「編集者」×「デザイナー」の意味や存在意義もなんとなく、変えていかないといけないのだろう、と業界参加者の気運を感じるところであった。
そんななかで「NovelJam」が目指す価値は、その答えのいくつかを提示してくれるのではないか。そんな希望がある。野望ともいえるか?
今回のトークイベントは、プレイベント第1弾の位置づけで3本柱のなかでも「デザイナー」について焦点を当てた。Wトークイベント第1部は、過去ノベルジャム参加者の、杉浦昭太郎さんと山家由希さん。第2部は「デザイナー出版者」と題し、デザイナーでもありながらリトルプレスを刊行する町口覚さんと松本弦人さん。
司会にはまつもとあつしさんも。的確なコメント、私のうっかりマイク移動など「緊張することは忘れた」自然体に大変助けていただいた。
杉浦さん(写真・右から二番目の男性)は前回山田彰博賞を受賞しており、さらに前回同チームでもあった山家さん(写真・右端の女性)は、グランプリアワード特別賞を受賞している。
過去のデザインを振り返りながらスタート。デザインの力で商品価値が高められる、と杉浦さん。広告業界に精通しているということもあり、電子書籍配信サイトでの書影はアイコン化されていることにも触れられる。「販促イベント」にも山家さんはSNS拡散のためアイコンデザインをしていただいた。
近年の広告デザインの傾向として「購買期」⇔「体験期」に”変身”させ”ブランド力向上”をねらう「脱皮缶」やチョコレートパッケージを事例に、電子書籍もまた「購入前」と「購入後」の表紙は変化しても面白いねとトークがとびだした。書籍で言えば「本の帯」。やましたひでこ著「捨てる」(装丁/山家由希さん)の帯をつけてても、帯を捨ててもよいデザインであるというような。
・安心できる分かりやすさ=アフォーダンス を追求するか
・分からないけど面白そう=ラブマーク を追求するか
2択に落とし込むのであれば、「なんだかよくわからないけど面白そうなデザイン」を冒険してみるのも、まだまだ過渡期の電書アプローチならでは望めるのかもしれない。よくわからないけど、面白そうな装丁を「購買してみたい人が14%」Twitterアンケート(n=504票)も。
デザインの分類も興味深かった!
デザイナーではあるがただ、デザインするだけではない。「作品世界」を増幅させ、「手に取ってもらい」、「売る」、ために通じることだ。※普通の仕事じゃここまで身がもたないか!?、とも思いながら。
第2部は、スタンディングトーク。町口さんと松本さんの2名が書籍を投影しながら「デザイン」ではなく、「デザイナー」について語る。
写真・左が松本弦人さん、右が町口覚さん。ロックスターのようにかっこいい。しびれる。
リトルプレス(小部数の出版物)の企画から流通まで、出版フロー実践者だからこその多岐にわたるお話。
あ~、テンション低くてすんません。
— 松本弦人 (@gento466) 2018年8月13日
今週末から連続トークで、
8/18 町口覚
8/26 飴屋法水
9/06 小沢康夫
9/07 葛西薫
って、テーヘンなダンナばっか。
まずは町口とこんな話しますん。 pic.twitter.com/QgBAY86y2u
まずはフロッピーディスクをメディアに見立てデータ販売のやりとりしてた「フロッケ展」(1994年)のチラシも投影。もう、ここから本当に面白くて……。
松本弦人さんもNovelJamボランティアの肩書を披露しつつも、人となりの紹介にBCCKSから「一〇〇〇文庫」。WEBでも読むことができてしまう。
とはいえ画像で見ても物質感、重量、「本」の手ざわりが伝わらないので、ナディフか、どこかで触ってくれ~。1000ページ超。「本」の追及は町口さんも同じかそれ以上?で、特に『Sakiko Nomura:Ango』の造本はすさまじい。坂口安吾『戦争と一人の女』(GHQ削除版を収録)に削除部分はグレーに、野村佐紀子さんの写真との組み合わせも素敵だった。今年11月、フランス語版で「パリフォト」にも出展とのこと。
2018 Exhibitor list - PARIS PHOTO
Sakiko Nomura: Ango(日本語版) - 野村佐紀子 | shashasha 写々者 - 日本とアジアの写真を世界へ
森山大道さんの写真と太宰治『ヴィヨンの妻』を収録した、『Daido Moriyama: DAZAI』、不織布で覆われた表紙と背表紙にうっすら「Dazai Daido」の文字。さらに本文の切り口が3辺ともザラザラしている・・・(わざと3回錆びれた刃で切ってもらうとか・・・。)そもそも初めて手掛けた森山大道さんの写真集も、見開きで片ページには森山さんの写真は小さくいれて、片ページには町口覚さんが撮影したアスファルト写真を大きくいれて提案・・・と大胆かつこれが、ロックスター・・・と思わずにいられなかった。
リトルプレスの在庫管理も触れていて、写真集は写真部分だけ先に部数すり、言語verちがいの売れ行きをみて追加部数を刷るようにしたり、関税率や在庫の梱包もまた大変でヨーロッパの友人・知人の倉庫にヘルプの手を求めたりと、体験談も想像以上で松本さんと町口さんのやりとりリズム感も刺激的だった。
町口覚さん「モノを作るというのは基本的に迷惑をかけること。でもどうせ迷惑かけるなら徹底的に気持ちよくやろうと」#noveljam
— まつもとあつし (@a_matsumoto) 2018年8月18日
松本弦人さん「 #noveljam はデタラメなイベント。はじめて会った人が3日間で本を作るなんて無茶。でも、そんな滅茶苦茶なところから新しいものは生まれる。だから応援している」 ありがたい……。
— まつもとあつし (@a_matsumoto) 2018年8月18日
第1部、第2部を通しながらも出来上がるモノは違えど、プロセスは同じである、というようなことを松本弦人さんがおっしゃっていただき、いやはやたまげたー。
この辺りで予定の30分40分は超えてたのだけど2つのトークを振り返りながら、「NovelJam」がひとつの仲間づくりの場であること、今後の作品作りにおける「デザイナー」の新たな価値や意義を示しているのではないか、というようなことの情報を整理。
きっと小説を超えてしまうかもしれないデザイナー、作品原動力となるデザインが次回は登場してしまうんだろう。
登壇者で記念撮影をしたので、これはしばらく待ち受けにしよう。9月にはプレイベント第2弾で「編集者」をテーマに行う予定。熱いトークで会場クローズは1時間以上予定が伸びていた。
最後に、ぜひノベルジャム第3回の募集も開始されているので、11月23日~25日リアルな場でバトルされたい方はぜひ応募されたし。
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NovelJam 2018秋 参加要項 | NovelJam
2018-8-6 山のまちライブラリー 奥多摩ブックフィールド お披露目会
何もない木造の廃校にむかったのが4月中旬、「奥多摩調査団」の名目でお誘いいただき、のんきに参加したのが事のはじまりだった。そもそも本好きの性分というか、幾人かでソトにでることは、珍しいので「奥多摩の廃校に行く」というだけで詳細は不明であったが、行かない理由はないな~と思った。
<東京・明大前>から、<東京・奥多摩>までドライブでは約2時間。初対面のみなさまと同乗させていただいたことも3ヶ月前というのにすこし懐かしい。振り返れば、この日が”まちライブラリー”出逢いの日でもある。
まちライブラリーというのは、寄贈本を持ち寄って貸出・返却を行う「みんなとつくる図書館」である。本には「感想カード」がついておりコメントを書くことができる。どんどん感想がつらなると、”本”を通してまた居心地の良い場所にもできるしくみを持ち、今や全国600か所ちかい、まちのあちこちで”図書館”が開設している。
そもそもなぜ、奥多摩か、といえば、提唱者の磯井さんが奥多摩にゆかりある方を通し、7年前にも「廃校利用」&「本」の着想を得ていた。しかし2011年・東日本大震災の年と重なり実現にはいたらないでいたという。
2018年、単なる”遠足”と思っていたわたしは、なんだかおおいなる構想に胸を躍らせてしまった。実際、旧小河内小学校(現・奥多摩フィールド)は大変によき場所で、日々の喧騒を忘れ、静かに孤独と本を味わえるに違いないと確信しながら。
・・・というわけで、第2次奥多摩調査団は初夏のころ。ありがたいことに10名以上の有志がそろった。かつての職員室を、清掃、清掃、清掃、校舎から「本棚」6台以上の本棚の搬入を行う。力仕事の男性陣とバケツに水掃除の女性陣と手分けをした。あんまりみんなよく知らないもの同士なのに、よく働いたな、楽しかったなと、思わずにやっとしてしまう。
第3次調査団。まさか2000冊以上の本の梱包をひもとき、陳列。ここでも書籍BOXが30以上並んだ。(その後、オーナーさんによって本の整理整頓も完了されていた)
汗かく労働にはビール、まさな単なる「本」だけで、ここまで動くことになるとは思わなかったと春先のわたしにこっそり耳打ちしたい。さらに現地を通にて奥多摩に集いし有識者の発想センスとんでもなく楽しいなあと思う。(特に本棚の陳列方法と、並んだ本に関してのあれこれ・・・と)
さて、本が3,000冊以上陳列されたわけで。
8月18日、山のまちライブラリー@奥多摩ブックフィールドと名付けられた場所でお披露目会が決定した。
一箱古本市も行われるし、開梱した2,000冊はドイツ文学者の蔵書だ。あとの1,000冊には図録や書皮蒐集のコレクションも含まれる。そうそう普段は「いつでも」「だれでも」が入れる場所ではない。特別な日になるといいな。
同日同場所では「まちおこしモンスターフェス2018」も開催される。お披露目会が終わった後は体育館に集合、と。ビールにパフォーマンスに盆踊り大会。改めて言うが本好きが「ソト」に出るのは本当に珍しいことだと思う。(ましてや奥多摩に汗かく労働まで!) それでも場をつくるに値する魅力的な奥多摩なんだろうなと感じ入る。観光名所もあんまりみていないけれど(笑)
最後に、ここまで書いて大変恐縮なのではあるが、8月18日はイベント司会の大役を担っており現地には不在となる。隊長代行のP氏にエールを送っている!
わたしのかわりに完成した状況を目に焼き付けてきてほしい。当然ながら<東京・奥多摩>は遠いね、というのであれば<東京・渋谷>に来られたし。
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〝本〟と〝デザイナー〟 町口覚+松本弦人 杉浦昭太郎+山家由希 | Peatix
詳細は後日。